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Waseda Institute of Medical Anthropology on Disaster Reconstruction
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福島第一原発事故で被災・避難された方へのアンケート調査 結果報告

2026 3/13
お知らせ
2026年3月13日

日本放送協会(NHK)仙台・福島放送局と早稲田大学災害復興医療人類学研究所(WIMA)は、福島第一原発事故で被災・避難された方を対象としたアンケート調査を実施いたしました。その結果を報告いたします。

  • ※詳細な報告は3月末に当サイトにて改めて掲載予定です。

最初に、本調査にご協力いただいた皆様に、こころから感謝を申しあげます。

【TV放映情報】
本調査の結果は、2026年3月14日(土)23時〜 ETV特集「”歳月に埋もれた声”をたずねて;福島・原発避難者の15年」として放映されます。
再放送:3月19日(木)0時〜、NHK ONEでも配信予定


ニュースレター(NHK・WIMA調査報告)20260311ダウンロード

*以下に上記ニュースレター(PDFファイル)の内容をテキストで合わせて掲載いたします。

広範囲かつ長年にわたって続く被害 ―避難継続中が4割―

[1]本調査の目的

原発事故による被害がいかに広範囲に長年にわたって続き、被災者・避難者の方々がどのような苦労をご経験されてきたのか、現状を把握することです。

原発事故によって苦しむ人を二度と生まないためにも、この調査結果を今後の被災者支援や施策に役立てていきます。

[2]調査の対象と方法

【自治体配布版】
福島県浜通りの13被災自治体にご協力をいただき、各自治体の広報誌に同封する形でアンケート調査用紙と返信用封筒を配布しました。合計26,072世帯に配布し、2,269件(回収率8.7%)の回答が得られました。

【支援団体配布版】
日本全国の29避難者支援団体・原告団体にご協力いただき、各団体から郵送(一部WEB版回答)する形で配布しました。合計5,746世帯に配布し、1,224件(回収率21.3%)の回答が得られました。

今回のご報告は、自治体配布版と支援団体配布版の、合計3,493件の集計結果です。

[3]回答者の基本情報

  • 平均年齢: 69.9歳
  • 性別: 男性56.5%、女性40.1%、他0.7%
  • 現在の居住地: 北海道から沖縄まで(福島県内73.9%、茨城県3.2%、宮城県2.6%、埼玉県2.5%、東京都2.5%)

2011年当時の避難区域:

  • 警戒区域 32.6%
  • 緊急時避難準備区域 19.8%
  • 計画的避難区域 12.9%
  • 避難指示区域外 18.5%

現在の避難区域:

  • 帰還困難区域 16.2%
  • 特定復興再生拠点区域 5.4%
  • 避難指示が解除された区域 45.5%
  • もともと避難区域外 21.1%

現在の状況:

  • 避難継続中 40.3%
  • 移住 22.5%
  • 帰還 24.1%
  • 原発事故後、現在の居住地に落ち着くまで平均4.3回転居

[4]被災状況

震災および原発事故でご家族を亡くされた方は15.3%(533件)。そのうち61.0%(325件)が震災関連死で、津波被害は5.2%(44件)でした。

原発事故当初の急性トラウマ体験:

  • 放射線がとても怖かった 51.2%(1,787件)
  • 身の危険を感じた 41.1%(1,434件)
  • 被ばくしたと思った 37.7%(1,317件)
  • 必死に逃げた 30.4%(1,063件)
  • もう終わりだと思った 18.6%(649件)
  • 思い出したくない 18.2%(634件)

現在の健康状態:

  • からだの健康状態が「少し悪い・とても悪い」合わせて34.8%(1,215件)
  • 事故後に新たな疾患を患った方 58.6%(2,046件)
  • 大きなケガや事故にあった方 12.4%(434件)

15年経過しても低下しないストレス状況 ―多様な社会・経済的要因が関連―

[1]不安・抑うつ・PTSD症状

K6(気分・不安障害調査票)では17.3%の方が、13点以上の「心理的苦痛が高い」状態であることがわかりました。

IES-R(改訂出来事インパクト尺度)では、33.1%の方が、PTSDの可能性があるほどの高いストレス状態にあることがわかりました。

2012年より継続して調査を行っており、原発事故から3年の2014年頃までは6割近い方々がPTSD症状を抱えていましたが、2015年以降は多少減ったものの、3割〜4割の方々が依然として高いストレス状態にいることがわかっています。

事故から約15年の本調査でも3人に1人がPTSD症状を抱えており、ストレス状態が長引いていることがわかります。

[2]PTSD症状と関連した社会経済的要因

ストレス状態が長引いている要因として、以下が明らかになりました。

  1. 世帯の経済状況に困っている方 — 45.7%(1,596件)
  2. 原発事故に対する賠償や補償問題について心配事がある方 — 52.5%(1,834件)
  3. 家族関係がうまくいっていない方 — 27.2%(948件)
  4. 原発事故をきっかけに離婚をした方 — 3.4%(119件)
  5. 相談できる人がいない方 — 26.4%(922件)
  6. 他の人たちから孤立していると感じる方 — 42.6%(1,438件)
  7. 避難者・被災者であることによって「いやな経験」をすることがある方 — 55.8%(1,438件)

統計解析によって、これらの社会経済的要因がPTSDの可能性と大きな関連があることがわかりました。

[3]複雑性PTSDの可能性 約7%

国際トラウマ質問票(ITQ)を実施した結果:

  • 単純型PTSDである可能性の高い方 — 2.5%
  • 複雑性PTSDの可能性の高い方 — 6.9%

原発事故の被害に遭った方には、慢性反復的なトラウマに曝された方がなりやすい症状が多いことが示唆され、『原発事故型PTSD』の仮説が支持される結果となりました。

[4]避難継続中、県外避難、区域外避難の方のストレスが高い

PTSDの症状を測るIES-Rの結果:

  • 全体平均: 19.4点
  • 帰還された方: 平均16.2点
  • 避難継続中の方: 平均22.8点
  • 福島県内避難: 平均20.7点
  • 県外避難: 平均26.5点
  • 避難指示区域外からの避難者: 平均26.9点

[5]自由記述の「いやな経験」の多層的分析

復興の裏側で、苦悩が内面化し複雑化していることがわかりました。

事故初期の「放射能への恐怖」に関連した差別から、現在は「賠償金への妬み」に変化しており、社会からの排除や疎外が日常化し、家族・親族・近隣関係が分断している状況が普遍的に存在していることがわかりました。

原発事故の話題を周囲の人に話すことに抵抗があると回答された方が42.2%(1,474件)いる状況は深刻です。


用語解説

◆ PTSD(心的外傷後ストレス症)
命の危機を感じるほどの強い恐怖体験のあと、そのトラウマが突然、全身にフラッシュバックしたり、出来事を避けようとしたり、神経が高ぶってしまうなど、心身に症状が出る病態です。

◆ 複雑性PTSD
虐待や暴力など慢性的に繰り返されるトラウマによって生じるタイプの、より重度なPTSDで、感情的になりやすかったり、自分に価値がないと感じたり、他人との関係を避けたりする症状をともないます。

◆ 原発事故型PTSD(仮説)
大地震・津波・原発事故という急性トラウマに加えて、その後15年間繰り返された政治・経済・社会による構造的暴力によって生じる、PTSDと複雑性PTSDの特徴を兼ね備えたタイプのPTSDをさします。

◆ IES-RとITQの違い
IES-R質問紙では広い意味でPTSD症状を持つ人々が把握され、ITQ質問紙ではより臨床群に近いPTSDである可能性がある人々が把握されます。本調査ではIES-Rでは33.1%の方々が、ITQでは9.4%(単純2.5+複雑6.9)の方々が該当しました。

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