戸田典樹 編著
明石書店(2018年3月)
ISBN 9784750346519
判型・ページ数 A5・256ページ
福島第一原発事故から7年。政府は事故がなかったかのように帰還政策を打ち出し、避難生活者への支援を縮小してきた。しかし、避難者は未だ様々な問題に直面し、苦しんでいる。その現状と支援策の課題を明らかにするとともに、今後の支援策のあり方を問う。
第Ⅰ部 福島原発事故による被災者の生活問題
第1章 原発避難いじめの実態と構造的暴力[辻内琢也]
1 「原発避難いじめ」の実態
2 原発避難いじめ調査
3 アンケート自由記述の分析
4 いじめの構造
5 構造的暴力の仕組み
6 原発いじめに対する文部科学省の調査
第2章 楢葉町に見る自治体職員の生活実態と新たな課題――帰還できる町・楢葉町[渡部朋宏]
1 原発事故発生からの避難経過
2 原発事故避難における職員対応の実態と苦悩
3 町の復興に向けた職員の新たな使命
第3章 避難している子どもを支える居場所づくり[江川和弥・戸田典樹]
1 震災から7年目の現実
2 縮小される被災者支援
3 NPOやボランティアが支えてきた子どもの「居場所」づくり
4 大学生と子どもたちの「斜めの関係」と支援のふりかえり
5 「居場所」づくりにおける到達点と課題
第Ⅱ部 阪神・淡路大震災とチェルノブイリ原発事故から考える――社会的支援の縮小・住宅政策の問題点と課題
第4章 「借上公営住宅」の強制退去問題を考える[出口俊一]
1 「借上公営住宅」とは
2 強制退去策の先頭を走った神戸市の「第2次市営住宅マネジメント計画(案)」
3 歓迎されて導入された借上公営住宅
4 「借上公営住宅」はなぜ20年間であったのか
5 入居者の現状
6 神戸市のやり方はルールと常識に適っているのか
7 公平性を欠く自治体の政策
8 借上料― 神戸市「第2次市営住宅マネジメント計画」の説明と実際
9 強制退去策の判断・決定・遂行の責任を問う
10 法治主義を逸脱した退去通知
11 ようやく一部の継続居住を認めた兵庫県と神戸市だが……
12 目標は“希望する入居者の継続居住”
第5章 阪神・淡路大震災後22年にみる住宅政策の課題――「借上公営住宅」入居者退去問題に焦点をあてて[戸田典樹]
1 借上公営住宅から退去を迫る兵庫県、神戸市、西宮市
2 阪神・淡路大震災において住宅支援を受けた人たちの状況
3 借上公営住宅からの退去命令を受けた人たち
4 退去命令を受けた入居者の生活を考える
第6章 原発被災者の長期支援の必要性――チェルノブイリ原発事故被災者のインタビュー調査を通して[田中聡子]
1 チェルノブイリと福島
2 チェルノブイリ法が被災者を支える
3 チェルノブイリ原発事故被災者のインタビュー調査
4 福島第一原発事故の被災者を考える上で重要なことは何か
第7章 長期的避難生活を送る子どもを抱える家族への支援を考える[戸田典樹]
1 チェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故における避難指示
2 両原発事故における被災者を対象とした調査
3 考察
第8章 福島原発事故避難者問題の構造とチェルノブイリ法[大友信勝]
1 研究の背景と目的
2 福島原発事故避難者問題の現局面
3 避難者問題の構造
4 原発事故における避難の視点と位置
5 チェルノブイリ法の教訓と避難者問題
6 研究課題
第Ⅲ部 福島原発事故被災者の夢と希望
第9章 避難者の実質的生活補償へ[津久井進]
1 「生活」を取り戻す
2 賠償の現状
3 補償を阻む3つの課題
4 生活補償を実現するために――災害ケースマネジメント
第10章 米山隆一新潟県知事インタビュー――原発事故、その影響と課題[聞き手:大友信勝・戸田典樹]
福島原発事故およびその影響と課題についての検証――最初の課題は物理的に何が起こったか
健康と生活に及ぼした影響の検証
放射線科医の視点から見えるもの
避難計画をめぐる検証
柏崎刈羽原発再稼働をめぐる動向
代替エネルギーの考え方
福島原発事故避難者への住宅等の支援
避難者への誤解
避難計画公聴会をめぐって
子どもたちが原発事故をみる視点
情報公開と市民的目線で――民主主義を貫き通すということ