辻内 琢也/トム・ギル 編著
明石書店(2022年10月)
ISBN 9784750354699
判型・ページ数 A5・424ページ
[書籍キャプション]
事故から11年。人間が引き起こした災害は戦後最大の「国内避難民」を生み、人々の生活に深い分断と苦悩をもたらし続けている。圧倒的暴力を前に我々は希望を見出すことができるのか。国内外の人類学者らが当事者とともに、隠蔽された社会構造を読み解く。
[推薦文]
・幕引きを強いる構造的暴力を
地べたから可視化する試み
——日野行介氏(『調査報道記者』著者)推薦
【書評情報・関連記事】
○原発災害が生み出した分断の深みと、それを越えていく歩みを描く——『福島原発事故被災者 苦難と希望の人類学』より(じんぶん堂)
イントロダクション――分断と対立の根底にある問題群[辻内琢也]
はじめに
1 核の平和利用というレトリック
2 「安全・安心神話」の持つ権力性
3 原発事故避難者数の推移からみた分断の進行
4 作り出された分断と対立の現状
5 分断と対立を生む構造を理解するために
6 新たな人類学の試み
第1章 慢性状態の急性増悪――原発事故被害者に対する構造的暴力の解明[辻内琢也]
はじめに
1 精神的ストレスの六年間の推移と先行研究との比較
2 原発避難いじめ調査と構造的暴力
3 地震と津波そして原発事故
4 始まる避難先での生活
5 南相馬市の被災状況と避難区域の指定
6 不合理な避難・帰還区域の設定と賠償金の格差が生み出した暴力
7 不合理な放射線基準に抗する
8 慢性状態の急性増悪(acute-on-chronic)
9 原発避難いじめの構造に抗する
おわりに
第2章 突然の追放、突然の富、そして妬みと差別――福島県飯舘村長泥・強制避難者の苦難[トム・ギル]
はじめに――福島市郊外のバーベキュー
1 放射能の恐怖のなかで暮らす
2 賠償金が次第に入る
3 賠償金による人びとの分断
4 亡命生活
5 ふるさとに対する感情の複雑さ
6 戻っても戻らなくても人間関係を保つ
7 放射能差別と妬み差別
8 高齢者の寂しさ
おわりに
第3章 閉ざされたドア――東京・高層マンションにおける避難者コミュニティの苦闘[楊雪]
はじめに
1 仮設住宅と仮設住宅で生み出された社会関係
2 東雲住宅における避難者受け入れ
3 「東雲の会」の設立
4 「東雲サロン」――「見守り」それに「ゴミ拾い」
5 理想的な避難者と単身男性自主避難者
6 きずな
7 自治会ではない「東雲の会」の立ち位置
8 東雲サロンが生み出した社会関係
9 「閉ざされたドア」
おわりに
第4章 日常の苦境、模索する希望――「強制避難」単身女性たちの暮らし[堀川直子]
はじめに
1 避難者と賠償金
2 双葉町から関東圏へ――集団避難の暮らしは「かごの鳥」
3 浪江町から東京都内へ――帰る場所はあるのか、ないのか
4 常葉町から東京都内へ――避難者であり支援者でもある
5 避難状態と強制避難者たちの生き方
おわりに
第5章 福島から自主避難した母親たちのディレンマ――家族と社会を尊重しながら、どう放射能から子どもを守るか[アレキサンドル・スクリャール]
はじめに
1 本章の目的と調査方法
2 放射線モニタリングと汚染対策のズレに関する議論
3 山形における福島からの避難状況
4 福島と山形で起こっていたこと
5 山形で福島のものをどう扱うか
6 福島との行き来のはざまで揺れる気持ち
7 ネオリベラリズム社会のなかの「良妻」と「賢母」の葛藤
おわりに
第6章 草の根からの「市民」と、国や東電が構築する「市民」――ゆらぐ「市民性」に対峙する市民放射能測定所[木村あや]
はじめに――「市民」としての計測
1 一般の住民による放射能測定
2 避難者との関係性
3 測定所の貢献
4 「市民」とは
5 「市民」としての測定
6 避難者の市民性
7 市民性のゆらぎと葛藤
おわりに
第7章 住宅支援打ち切りへの抗議――自主避難者による抗議運動の成否を分けた六つの要因[レシュケ綾香]
はじめに
1 当事者、被害当事者としての自主避難者
2 運動はどのように出現したのか
3 運動はいかにして当事者運動に移行し、発展を続けたのか
4 なぜこの当事者運動は限定的な成功しか収めることができなかったのか
おわりに
第8章 自主避難者が帰るとき――放射線防護対策と社会的適切性の狭間で[マリー・ヴァイソープト]
はじめに
1 目に見えないものに形を与える――科学と社会的言説に基づく実践
2 混乱、恐れ、苛立ち――長い道のり
3 安全性の再定義――リスク認識と放射線防護
4 沈黙の苦痛――社会的適切性に直面して
5 境界のせめぎあい――個人とコミュニティの間の不安定なバランス
6 「安全・安心・復興・絆」言説下の行為主体性
おわりに
第9章 「大熊町の私」から「私の中の大熊町」へ――ふるさとの構造的な喪失と希望の物語の生成[日髙友郎、鈴木祐子、照井稔宏]
はじめに――除染作業が引き起こした「ふるさとの喪失」
1 福島県大熊町の来歴、インタビュー協力者、研究の視点
2 ふるさとの「構造的」な喪失
3 希望の物語を生成する――誰がどのように、どのような物語を?
おわりに――ふるさと喪失者のライフ〈生〉を記述するエスノグラフィー
第10章 分断と対立を乗り越えるために――当時小学生だった若者たちとの対話から[平田修三、金智慧、辻内琢也]
はじめに
1 糸口としての「対話」
2 当時小学生だった若者たちとの対話を開始する
3 子どもの苦悩とたくましさ
4 被災当事者としての活動・社会発信
5 今回の対話やシンポジウムの意義
6 語ることの困難さに向き合いながら、なお「対話」を試み拡げていく
おわりに
エピローグ――苦難と希望の人類学[辻内琢也]
1 苦悩(suffering)あるいは苦難(calvary/tribulation)の人類学
2 希望の人類学に向けて
おわりに
<執筆者一覧>
第1章:辻内 琢也(Takuya TSUJIUCHI)
愛知県生まれ。幼少期をアパルトヘイト下の南アフリカ共和国で過ごす。早稲田大学人間科学学術院教授、早稲田大学災害復興医療人類学研究所所長。博士(医学)東京大学。浜松医科大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科博士課程ストレス防御心身医学修了、千葉大学大学院社会文化科学研究科文化人類学満期退学。ハーバード大学難民トラウマ研究所(Harvard Program in Refugee Trauma: HPRT)客員研究員等を経て現職。専門は医療人類学、文化人類学。医師、日本心身医学会認定専門医、日本医師会認定産業医。阪神淡路大震災におけるボランティア被災地医療経験が、医師および研究者としての原点になっており、東日本大震災後は、埼玉県への避難者に対して震災支援ネットワーク埼玉(SSN)副代表として支援活動を行うと同時に、医学・心理学・人類学的調査を続けている。第11回(1997)日本心身医学会『石川記念賞』、第16回(2014)『身体疾患と不安・抑うつ研究会賞』、第20回(2021)『日本トラウマティック・ストレス学会・学会奨励賞・優秀演題賞』受賞。
主な論文著書:「阪神淡路大震災における心身医学的諸問題(Ⅱ)」(心身医学:36(8), 1996)、『ガジュマル的支援のすすめ』(早稲田大学出版部,2013)、「High prevalence of post-traumatic stress symptoms in relation to social factors in affected population one year after the Fukushima nuclear disaster」(PLoS ONE:11(3),2016)、「大規模調査からみる自主避難者の特徴」『福島原発事故 漂流する自主避難者たち』(明石書店,2016)、『フクシマの医療人類学』(遠見書房, 2019)、『Human Science of Disaster Reconstruction: An interdisciplinary approach to holistic health following the Great East Japan Earthquake and Fukushima nuclear disaster』(INTERBOOKS,2019)、「Post-traumatic Stress Due to Structural Violence after Fukushima Disaster」(Japan Forum:33(2),2021)。https://researchmap.jp/read0129954
第2章:トム・ギル(Thomas Paramor GILL)
英国ポーツマス生まれ、オックスフォード育ち。明治学院大学国際学部教授。ロンドン大学(LSE)博士(社会人類学)。ケンブリッジ大学(英文学)卒業、ロンドン大学政治経済学院修士課程、ロンドン大学政治経済学院博士課程修了。京都文教大学人間学部文化人類学科、 東京大学社会科学研究所を経て現職。専門は社会人類学。日本のドヤ街、ホームレス、賭博者の研究を経て、2011年の東日本大震災をきかっけに福島研究を始める。
主な論文著書:「寄せ場の男たち:会社・結婚なしの生活者」『共同研究・男性論』(人文書院, 1999)、「日本人の都市路上に散った男らしさ:ホームレス男性にとっての自立の意味」『日本人の「男らしさ」:サムライからオタクまで「男性性」の変貌を追う』(明石書店,2013)、『東日本大震災の人類学:津波、原発事故と被災者たちの「その後」』(編著,人文書院,2013)、『毎日あほうだんす:寿町の日雇い哲学者西川紀光の世界』(キョートット出版,2013)。https://researchmap.jp/7000000082
第3章:楊 雪(Xue YANG)
中国・武漢市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻博士課程。修士(文化人類学)東京大学。国連赤十字連盟東アジア事務所、Save the Children UK、ORBIS Internationalにて、それぞれ2008年四川地震復興事業、子どもの権利、農村地域のコミュニティ健康増進に関わる仕事に従事。東京大学国際人材養成プログラム(文化人類学専攻)修了。東京大学人間の安全保障プログラム(文化人類学専攻)博士課程後期在籍中。専門は文化人類学。2008年の中国四川大地震復興支援事業に従事し、災害復興と人類学の関係性に着目。修士論文では福島原発避難者の東京でのみなし仮設住宅となった「東雲住宅」をテーマとした。現在、その延長として福島原発被災地の復興について研究を継続。
主な論文著書:「山奥の小学校―中国のミャオ族の児童教育に関する人類学研究」(中国語)、『中国西部地域における少数民族の教育の発展』(民族出版社、2009)。(書評論文)「災害研究におけるジェンダーの視点」(文化人類学:86(2)、2021)。https://researchmap.jp/yangxue1123
第4章:堀川 直子(Naoko HORIKAWA)
福島県生まれ。早稲田大学災害復興医療人類学研究所(WIMA)招聘研究員。PhD(社会学・社会人類学)。英国ハル大学社会学・社会人類学部卒業、英国ハル大学社会科学部応用社会調査学修士課程修了、英国ハル大学社会科学部博士課程修了。通訳・翻訳業、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員等を経て現職。専門は社会人類学。日本人ディアスポラ、南米からの帰還日系人のエスニックアイデンティティの変容など、「移動」がもたらす問題群の研究が発端である。東日本大震災後は、福島原発事故によって離散した避難者たちの暮らしを記録することに従事する。また、被災地および被災当時者にとっての「復興」と「支援」について継続して研究している。
主な論文著書:「Displacement and Hope after Adversity: Narratives of Evacuees Following the Fukushima Nuclear Accident」『Unraveling the Fukushima disaster』(Routledge, 2017)、「大惨事と自主的判断:福島原発災害後の『母子避難』の意味を問う」『震災後の地域文化と被災者の民俗誌』(新泉社,2018)、「大規模インタビュープロジェクトからの報告」『福島復興学1:被災地再生と被災者生活再建に向けて』(八朔社,2018)。
第5章:アレキサンドル・スクリャール(Aleksandr SKLYAR)◆
ウクライナ生まれ、7歳より米国コネチカット州で育つ。コルゲート大学教養学部客員准教授(Visiting Assistant Professor, University Studies Department, Colgate University)。PhD (社会文化人類学)。コルゲート大学最優秀成績卒業(日本語・人文学学部専攻)、アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター・レギュラーコース修了、ミシガン大学社会学(科学技術社会論)準修士、社会文化人類学修士、ミシガン大学アナーバーキャンパス社会文化人類学博士課程修了。博士論文のタイトルは『フクシマ後のグレーゾーンに生きること:原発事故を受けての家族決断』。専門は社会文化人類学。日米教育委員会フルブライト大学院研究生プログラム2014〜15年、米国科学財団大学院研究フェロシッププログラム2013〜2017年(National Science Foundation Graduate Research Fellowship)。子供の頃からチェルノブイリの話を母から聞いて育った。大学の頃に始めて広島と長崎の被爆者の証言を聞き、被爆者の声をアメリカの大学生と高校生に広げようと様々な活動に取り組んだ。2011年に横浜で東日本大震災を体験し、自分も原発事故と向き合わなければいけない人生を生きる状況に置かれたと思った。2012年の夏は、東京周辺の事故後の草の根の政治運動について予備研究もおこなったが、家族の米国への移民体験と福島第一原発事故後の自主避難者の状況に共感を覚え、福島の自主避難者の母親たちとグレーゾーンに生き続けた人々の研究を開始した。
主な論文著書:「Japanese Studies Spotlight: Humanizing History: Creating Nagasaki Atomic History and the Present」(The North American Coordinating Council on Japanese Studies Resources,2021)。「Value conflict among voluntary evacuee mothers from Fukushima: protecting children from radiation, respecting family and society」(Japan Forum:33(2),2021)
第6章:木村 あや(Aya Hirata KIMURA)
京都生まれ鎌倉育ち。ハワイ大学社会学部教授(Professor, Department of Sociology, University of Hawaii`i-Manoa)。上智大学法学部国際関係法学科を卒業した後、イェール大学で修士(環境学)、ウィスコンシン大学でPhD(社会学)取得。専門は環境社会学、科学社会論、食と農の政治学、ジェンダー研究。Citizen Science: Theory and Practice誌の市民科学と災害の特別号(2022年)の共同編集者、2022年Social Science Research Councilの Social Dimension of Climate Changeプログラムの共同ディレクター。幼い頃から環境問題に関心があり、大学院以降の研究でも環境汚染・健康被害と社会の権力構造の関係について取り組んでいた。特に食・農と環境正義についての研究を進めていたことから原発事故と市民社会の研究に加わった。
主な論文著書:『Hidden Hunger: Gender and Politics of Smarter Foods』(コーネル大学出版,2013,Rural Sociological Society学会のOutstanding Scholarly賞受賞)、『Radiation Brain Moms and Citizen Scientists: The Gender Politics of Food Contamination after Fukushima』(デューク大学出版,2016,Society for the Social Studies of Science学会のレイチェル・カーソン賞受賞)、『Food and Power: Visioning Food Democracy in Hawai‘i』(ハワイ大学出版,2016,K. Suryanataと共編)、『Science by the People: Participation, Power, and the Politics of Environmental Knowledge』(ラトガース大学出版,2019,A. Kinchyと共著)。「Tsukemono (Japanese pickles) and their traditional vegetables」(Gastronomica:21(3),2021)、「Pickles and agrobiodiversity: a foodway and traditional vegetable varieties in Japan」(Agriculture and Human Values,2021)、「Citizen science as a “repertoire of contention”: GE monitoring in Japan and social change potential of participatory science」(Sociological Review:69(3),2021)。https://ayakimura.weebly.com
第7章:レシュケ 綾香(Ayaka LÖSCHKE)
埼玉県生まれ。エアランゲン=ニュルンベルク大学准教授(Junior Professor, Institute for Near Eastern and East Asian, Languages and Civilizations, University of Erlangen-Nuremberg)。PhD(日本学)チューリヒ大学。上智大学哲学科修士課程修了、ボン大学哲学科修士課程修了、チューリヒ大学研究員(PhD Candidate)、ワシントン大学(シアトル)客員研究員、チューリヒ大学研究員(Research Fellow)、ミュンヘン大学政治学科客員研究員、を経て現職。専門は政治学・社会学、日本の社会運動、政策過程、官僚、ヘイトスピーチ規制、オンラインコミュニケーション研究。生活協同組合を利用してきた母親の影響で、もともと食の安全には興味があり、3.11以後、自身も東日本産の食料品に含まれる放射能の量を気にするようになったため本研究を始めた。2021年度ISS/OUP 賞(The ISS/Oxford Prize for Modern Japanese Studies)受賞。
主な論文著書:「Civil society involvement in the policy-making after Fukushima: The Case of the Nuclear Disaster Victims’ Support Law」『Social Movements and Political Activism in Contemporary Japan: Re-emerging from Invisibility』(Routledge, 2018)、「Administrative measures against far-right protesters: An example of Japan’s method of conflict resolution」(Social Science Japan Journal:24(2), 2021)、「A Victims’ Movement Against the Termination of Housing Support for Voluntary Evacuees」(Japan Forum:33 (2), 2021)、「Radiation moms’ organizational survival for a decade: A shift from advocacy to non-advocacy activities」(Contemporary Japan:34(2), 2022)。
https://www.researchgate.net/profile/Ayaka-Loeschke
第8章:マリー・ヴァイソープト(Marie Weishaupt)
フランス生まれ。日仏家庭で育つ。その後、学士課程、修士課程での2度の交換留学で日本についての知識を深める。ベルリン自由大学大学院東アジア研究科博士課程(PhD Candidate, Graduate School of East Asian Studies, Freie Universität Berlin)。リール政治学院ヨーロッパ政治学部卒業、リール&リヨン政治学院大学院現代東アジア学科修士課程修了。政治学修士。専門は政治学。東日本大震災後仮設住宅での社会基盤の問題について興味を持ち、修士論文執筆。さらに自主避難の経験とリスク認知度について興味を持ち、リヨン国立科学研究センター(フランス)のDILEM(Displaced and undecided people left to themselves in post-Fukushima Japan)プロジェクトの研究員として研究。
主な論文著書:「Grieving Outside the ‘Zone’: Self-evacuation and the Experience of Loss in the Aftermath of the Fukushima Daiichi Nuclear Accident」『Nostalgia, Ecalgia, Topalgia: Pain of Past, Home and Place. The Deep Cultural Complexities Behind The Persisting Problematic Of Human Displacement and Resettlement』(Berghahn,2022)。
http://www.geas.fu-berlin.de/people/doctoral_cand/PhDs_2016/weishaupt.html
第9章:日高 友郎(Tomoo HIDAKA)
福岡県生まれ。福島県立医科大学医学部衛生学・予防医学講座講師。博士(文学)立命館大学、博士(医学)福島県立医科大学。立命館大学文学部卒業、立命館大学大学院文学研究科人文学専攻博士前期課程修了、同博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員DC2、福島県立医科大学医学部衛生学・予防医学講座助手、同助教を経て現職。立命館大学衣笠総合研究機構地域健康社会学研究センター客員協力研究員ならびに早稲田大学災害復興医療人類学研究所招聘研究員を兼任。専門は社会心理学、公衆衛生学。特に質的研究。2013年度日本質的心理学会『優秀論文賞』受賞。東日本大震災の翌年である2012年に現職場に着任し、県内避難者の抱える深刻な故郷喪失の苦痛を目の当たりにしたことが研究の動機となっている。福島の復興の「現場」に身を置きながら、県内避難者ならびに復興労働者のライフを支援するための研究と実践を行っている。
主な論文著書:「Discovery and Revitalization of “Feeling of Hometown” from a Disaster Site Inhabitant’s Continuous Engagement in Reconstruction Work: Ethnographic Interviews with a Radiation Decontamination Worker Over 5 Years Following the Fukushima Nuclear Power Plant Accident」(Japanese Psychological Research: 63(4), 2021)、「Factors associated with possession of accurate knowledge regarding occupational health management among operations leaders of radiation decontamination workers in Fukushima, Japan: a cross-sectional study」(BMJ Open: 9, 2019) 。https://researchmap.jp/7000006774
第10章:平田 修三(Syuzo HIRATA)
山口県出身。仙台青葉学院短期大学子ども学科准教授、早稲田大学復興医療人類学研究所(WIMA)招聘研究員。修士(人間科学)早稲田大学。早稲田大学人間科学部、早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程、同博士後期課程単位取得満期退学。専門は発達心理学、児童福祉。震災・原発事故が起こった時に所属していた早稲田大学人間科学学術院・発達行動学(根ケ山)研究室のメンバーで「かささぎプロジェクト」を立ち上げた(当時,院生代表)。同プロジェクトでは、福島県から関東に母子避難した家族に寄り添い伴走しながら、離散した家族を結びつける支援活動を行ってきた。それから10年以上が経過して、当時子どもだった者たちが成人した現在、改めて、原発事故が(避難)家族にどのような影響を与えたのか、家族はどのように被災・避難体験をふり返るのかについて掘り下げていきたいと考えている。
主な論文著書:「ライフストーリーワークの視点に立った里子支援のあり方」(子どもの虐待とネグレクト:12(1),2010)、「制度化されたアロケアとしての児童養護施設:貧困の観点から」(発達心理学研究:23(4),2012)、『ライフストーリーワーク入門:社会的養護への導入・展開がわかる実践ガイド』(編著,明石書店,2015),「避難家族と子どもたちの適応:地域との関係を踏まえて」『震災後に考える:東日本大震災と向き合う92の分析と提言』(早稲田大学出版部,2015)。「How Evacuee Families with Children Adapt:Considering relationships with their communities」『Human Science of Disaster Reconstruction』(Interbooks,2019)。https://researchmap.jp/50888684