―震災支援ネットワーク埼玉による2018 年の調査から―
本研究は,原発事故による県外避難者の生活やメンタルヘルスにおける課題を明らかにすることを目的とした。
対象者は原発事故で首都圏に避難中の4,905 世帯とした。調査期間は2017 年10 月~2018 年1 月であった。回収できた362 部(回収率7.4%)を集計の対象とした。
調査の結果,気分・不安障害調査票(K6)得点13 点以上の割合は20.2%であった。17 点以上の割合は10.8%であった。ロジスティック回帰分析の結果,経済的困難「なし」群に対し,「あり」群における心理的苦痛の調整済みオッズ比は3.906 と有意な正の関連を示した。自由記述の分析では,経済的な悩み・不安,仕事に関する悩み・不安,加齢に対する悩み・不安などの課題が明らかとなった。
これらの結果から,個別具体的な支援活動を強化すること,複雑に絡み合う生活課題を解決するワンストップの相談機関の設置を制度化すること,民間支援団体が新たなコミュニティ育成のために行う交流会やイベントへの公的支援を充実させる必要性が示唆された。
Key words:福島第一原子力発電所事故,県外避難者,メンタルヘルス,K6,生活状況