筆者は震災支援ネットワーク埼玉SSN(以下、SSN)の心理相談チームの一員として、2011年3月11日の東日本大震災以降、原子力発電所事故(以下、原発事故)による被害から逃れるために、住み慣れた土地からの避難を余儀なくされた福島の方々とのかかわりを続けてきた。
原発事故から10年が経ち、日本に住む多くの人たちの記憶が薄れ、風化していくなか、本シンポジウムにおいて、原発事故当時小学生だった若者たちとの対話が実現したことは、非常に意義のあることである。
この世代の方々の語りは、震災支援を継続してきた者たちにとって聴く機会のなかった、さらに言えば聴こうとしてこなかったものであり、さまざまな経験を抱えながら、彼らが深く考え、生き抜いてきたことを痛切に感じる機会となった。
当時小学生だった、そして現在大学生となった彼らから受け取ったものをしっかりと抱えながら、本稿では、我々SSNの活動を紹介するとともに、被災当事者である福島の方々の実際の語りとともに、その語りに耳を傾け学ぶことの意義について考えてゆきたい。
萩原裕子a,b、中川博之a,b、愛甲裕a,b、猪股正a,b、辻内琢也a,b,c
The Importance of Listening and Learning from the Narrative of Survivors
Yuko Hagiwara,Hiroyuki Nakagawa,Yutaka Aiko,Tadashi Inomata,Takuya Tsujiuchi
a.震災支援ネットワーク埼玉(SSN):Shinsai Shien Network Saitama
b.早稲田大学災害復興医療人類学研究所:Waseda Institute of Medical Anthropology on Disaster Reconstruction
c.早稲田大学人間科学学術院:Faculty of Human Sciences, Waseda University